• 新型コロナと不動産市場(収益物件)

 

 完全失業率は2020年3月で2.5%とまだ低い水準ですが、昨年の12月からやや上昇しています。実体経済の先行きも不透明ですが、不動産市場(収益物件)の影響について触れてみます。

 収益物件は賃貸収入と利回りが説明変数になるので、一般的に下記のように収益価格が表されます。

 

P=a/r

(P:収益物件の価格、a:賃貸収入、r:利回り)

 

例)

家賃収入10万円の区分マンションは単純に、表面利回り6%とすると

(10万円×12)/6%=2,000万円

 

賃貸収入を前提とする投資用不動産は、賃借人との契約に基づく賃料が価格を構成します。現状では、Jリートなどをみても住宅系不動産は、ホテルや商業施設、或いは民泊よりも影響は直接的ではなく賃貸収入は比較的安定している状態です。アパートやマンション投資をする不動産オーナーもまだ甚大な影響を感じていない人も多いのですが、住宅系不動産といえども、サラリーマンなどの給与所得や個人事業主の事業所得が減少、失業率の上昇、有効求人倍率の低下が予測され、家賃収入が低下するは当然予測されます。ただし、影響はホテルや商業施設或いは民泊などよりも直接的ではなく、経済の停滞が続くことで遅れて影響が出てくることが懸念されます。

Jリートに組み込まれている事業用不動産は、定期借家契約で中途解約をしても違約による残存期間の家賃分負担が保証金相殺などにより取り決められていたりしますが、逆に、住宅は平成4年以降も借地借家法による定期借家契約はそこまで一般的ではなく、借主側がいつでも解除できる普通借家契約が一般的です。例えば、賃料の支払いが難しくなれば、賃借人は1カ月前にオーナーに通知して簡単に退去できます。オーナーはローンの返済がありますので、不況期には空室を嫌い少し安くても次の入居者を速やかに決めようと前回よりも安い賃料で契約をするケースが増えると思います。このため、住宅系の投資用不動産も価格下落リスクとは無関係ではないのです。

 

〔賃貸収入の変化〕

従前家賃収入10万円が8.5万円に下がったとすると、(8.5万円×12)/6%=1,700万円(△15%)に市場価格は下がります。

これを、ネット利回りを前提に査定すると

 

((10万円-2万円)×12)/4.8%=2,000万円 

[諸経費:2万円、NOI利回り:4.8%]

 

 となり、価格は2,000万円ですが利回りは運営純収益に対応した利回りです。(4.8%)

 これが、家賃収入8.5万円に下落すると

 

((8.5万円-2万円)×12)/4.8%=1,625万円 

[諸経費:2万円、NOI利回り:4.8%]

 

△19%下落することになります。つまり、諸経費(固都税、管理費等)が変わらないので純収益は大幅に下がり価格は家賃の下落以上に低下することになるのです。収益物件の査定としては、本来諸経費控除後のネット収入とそれに対応する利回りで査定するのが正しいのですが、特に個人などが検討する小規模な物件では、収入総額とそれに対応する表面利回りで投資判断されることが多いので気を付ける必要があります。

(ローン返済額控除の収支も重要ですがここでは省略します。)

 

また、収益物件については、市場で要求される利回り(r)が上昇することで価格下落が懸念されます。

利回りは、リスクフリーレートに対する不動産のリスクプレミアムで最低3%(ネット利回り)程度は必要ですが、それ以外に物件の立地条件や築年数、用途などに対するプレミアムがプラスされて4%、5%~と上がっていきます。

(都心のタワーマンションなどでは、利回り3%を切る利回りで販売されている物件もありますが、海外投資家などによる海外不動産との比較や、その物件が将来価格上昇する期待があるからです。そのような場合は、将来期待を織り込んで利回りが下がることになります。)

家賃収入などの収益に対する不確実性が高まると市場の期待利回りは上昇し、価格は下落します。金融機関に支払う金利の上昇も支払利息によるキャシュフローの減少につながるので投資家の要求利回りは上昇し価格は下落することになります(もっというと、金融機関の融資姿勢そのものや、自己資金の必要割合、借入金の返済期間も物件価格に影響します。2018年頃まではフルローンで、低金利、築浅物件による返済期間の長期化が高価格低利回りでも投資可能な市場環境を作っていましたが)。

 

いずれにしても、新型コロナウィルスによる収益物件市場への影響は、賃貸収入に対する不確実性を高め、金融機関の貸出金利の上昇や融資姿勢を消極的にさせるものだと思います。まだ大きな変化はありませんが、今後経済活動自粛が長引けば、利回りが上昇し物件価格への影響が出てくると思われます(すぐに元の日常が戻ればいいのですが)。売主と買主が合意して取引が成立するので、買主がどんなに買いたくても、売主が売らなければ取引は成立せず、市場は停滞したまま様子見の状態がしばらく続くと思われますが、自粛が続くと住宅系の収益物件市場にも影響が広がることが予想されます。

 

ちなみに、不動産鑑定評価では、賃貸収入に対する下落リスクを考慮する場合、還元利回りにも賃料不確実性のリスクを織り込んでしまうと、それは2重にリスクをみており、理論的整合性に欠け間違いだと指摘されかねないですが(物の本によるとそのようなことが書かれています。)、リーマンショック級の変化があった時、投資家は賃貸収入の下落と利回りのプレミアムを両方みているのが実際ではないかと思います。

なので、上記の例で行くと

((8.5万円-2万円)×12)/5.3%=1,472万円 

[諸経費:2万円、NOI利回り:4.8%+0.5%]

△26% ぐらいになります。或いはもっと下がります。(+0.5%は利回りに対するプレミアム。)

 

逆に言うと、好況期の上昇局面においても同じで、上昇要因を収入と利回りで2重にみることで実際の取引市場では価格の急激な上昇が起こっていますし、起こるということです。(だから理論値から乖離するのです。)

 

 

以上