借地の地代について述べたいと思います。地代は既存の借地権を前提としますので基本的には継続地代とします。

一般的に関東では、土地の固定資産税と都市計画税(以下、「固都税」)の3~4倍(住宅地)、4~8倍(商業地)が適正地代といわれます(業者間で多少の幅は有りますが大体この程度だといわれます。しかし、具体的な集計データで確認するとまた違う傾向もありますのでここでは参考にとどめて下さい)。これを「公租公課倍率」などといいますが、式で表すと年額地代合計÷年額固都税=公租公課倍率(固都税倍率)となります。

勿論、目安としては認識しておくべき倍率ですし、地主から見た場合に最低限損しない地代として大変参考になる目安です。ただし、倍率だけで地代水準を決定するのは経済合理性に反する場合がありますので、他の指標とも合わせて総合的に判断すべきです。

 

固都税倍率だけで地代が適正かどうか比較できない例としては例えば以下のようなものがありますので確認してみます。

例)

ある商店街に同じ面積の借地がAとBの2画地があります。どちらも借地面積30坪、地代は40千円円/月(1,333円/坪・月)、480千円/年です。固定資産税評価額はどちらも33,600千円/年とします。ただし、借地上の建物はAが1階店舗2~4階共同住宅、Bは1階店舗2~4階事務所だとします。

土地の固定資産税は土地固定資産評価額から課税標準額を求め、この課税標準額に税率を乗じて求めますので〔土地固定資産評価額×割合×税率=固定資産税〕、AとBの固定資産税+都市計画税は

 

A : 33,600千円×1/6×1.4%+33,600千円×1/3×0.3%=112千円

B : 33,600千円×1.4%+33,600千円×0.3%=571千円

 

となります。

 

ここで注意しなければならないのは、同じような土地なのに計算された固都税に差が出ていることです。なぜなら、土地上の建物の用途が住宅の場合(居住部分の割合が1/4以上で適用)、固定資産税の課税標準は固定資産評価額の1/6となるからです。また、都市計画税の課税標準は1/3となります。これは、「小規模住宅用地の特例」といって住居1戸あたりにつき土地面積200㎡までが1/6と1/3になる特例措置です(200㎡を超える部分は1/3と2/3)。

この特例は都市計画上の用途地域は関係なく、その土地上の建物の住宅割合に依存しますので、店舗事務所のBの固都税はAよりも約5倍高くなるのです。 そうすると公租公課倍率は、

 

A:480千円÷112千円≒4.3

B:480千円÷571千円≒0.84

 

となり、同じ年間480千円の地代で貸していても固都税額が異なるため倍率も大きく差が出てきます。

借地人Aからみると地代は相場であると考えられますが、借地人Bから見ると地代は相当安いということができます。このように同じ場所で同じ地代でも公租公課倍率に差がでるとこがあることを認識しておくことは損ではありません。もし、新しく土地を借りて賃貸用建物を検討する場合、住宅割合を多く(50%以上)した方がコストの面からは有利になるわけです。逆に、地主からすると用途を店舗事務所に制限すると地代は固都税よりも低く、毎年マイナスが発生するため、地主は土地を貸す経済合理性がないということになります。

 

つまり、適正な地代の判断のためには公租公課倍率だけではなく、更地価格又は底地価格に対する地代の取引利回りや同種用途の地代事例も比較して適正地代水準を判断する必要があるというわけです。

 

(※:不動産鑑定評価の実務では、簡便に把握できる地代水準を目安に、差額配分法、利回り法、スライド法、賃貸事例比較法といった手法を適用して継続地代を具体的に試算していきます。これらの手法がそれぞれ異なる考え方に戻づいているため結論に幅が出てくることもありますが、様々な情報を踏まえて案件に応じた総合判断することが重要なことだと思います。)