建物について鑑定評価を求められることがあります。建物は土地なしに単独で存在することができませんので、建物だけが独立して存在している状態を前提とした鑑定評価は行われません。建物は必ずその土地の立地条件や都市計画や建築基準法、条例などの法令の規制を受けているため、存立環境を前提とした土地建物一体としての価格のうち、その建物部分の内訳として評価(部分鑑定評価)を行うものです。このため原価法のみで鑑定評価額を決定するのは適切ではなく、収益還元法(建物残余法)や取引事例比較法などの他手法を併用する必要があります。そうすることで、当事者が納得できる建物経済価値を妥当な水準を求めることができるのです。

 

〔古い建物の場合〕

例えば、築30年の木造戸建住宅は建物積算価格が相当低くなると考えられますが、このような住宅でもリフォームして賃貸すれば家賃収入を獲得することができますので収益価格でも建物の価値は測定できますし、中古住宅に対するリフォーム需要が増加していることからリフォーム後の土地建物価格からリフォーム費用と土地価格を控除して建物価値を測定することもできます。

 

〔市場上昇局面〕

市場が上昇局面にあるケースでは、投資用1棟マンションの収益価格は積算価格を上回り、増分価値が発生しますが、原価法だけではこの価値の上昇分を判断できません。建物に帰属する増分価値を判定するには土地建物全体の積算価格と収益価格との差額を求めるなどして対象不動産全体の増分価値を把握したうえで、建物帰属増分価値を加算して建物価格を求めるなどの対応をする必要があります。或いは、建物残余法といった建物帰属収益を還元して収益価格を求めることで収益上昇分を建物価格に織り込んで評価することもできます。

 

〔市場下落局面〕

不動市場が下落局面の場合には、特に新築・築浅の建物については上昇局面と逆の現象が起こりますので、収益価格は積算価格よりも低く試算されます。この場合、収益価格と積算価格の差額は対象不動産の収益力や競争力の低下の表れとなり、マイナスの差額のうち建物帰属分を判定して減価を反映させる必要があります。もし、収益力や競争力の低下が主に建物の物理的、機能的な要因に基づくものであればその減価は土地ではなく建物に反映させることになります。

 

〔建物の取引事例比較法〕

賃貸収益性が望めない建物の場合は、同種の複合不動産の取引事例の取引価格から建物価格のみを配分法により抽出して建物取引事例として評価に用いることができます。この取引事例比較法により、実際の取引において中古建物の価値を市場参加者がどのように捉えているのか取引における中古建物の価値の位置づけを評価に織り込むことができます。

 

いずれにしても、原価法による積算価格のみでは時価を把握するのに十分ではありません。時価を求めるには、収益面からの検証や土地建物一体としての経済価値を把握するなど多面的な検証を行う必要があります。