東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)の人口は日本全体の約3割です。住民基本台帳移動報告(総務省)によると東京都特別区部の転入人口は毎年35万人前後(平成29年:36万人)で日本全体の移動者の約15%が東京23区に転入しています。また、東京圏でみると移動者の約40%(平成29年:93万人)もの割合になっており、東京を中心とした巨大な都市は人や経済を動かす大きな存在となっています。

3大都市に数えられる大阪や名古屋の大都市においても、大学を卒業した若者は地元を選択するよりも大企業での就職を目指して東京圏に転出するといわれており、近年その勢いは強まっています。

図表-1は東京圏への転入超過数を年齢別・年代別に表したグラフですが、20~24歳が突出していることが分かります。また、この傾向が強まっていることが確認できます。

図表-1 出典:住民基本台帳人口移動報告 5歳階級別(総務省)

(住民基本台帳人口移動報告(総務省)による5歳階級別転入超過数を集計して作成)

 

東京圏や23区内への人口流入は不動産市場に与えるインパクトは強く、東京都心を取り巻く周辺都市にも少なからず影響があるため、これらの人口動態と住宅市場との関係がどのような状態なのかまとめてみたいと思います。

 

◇これまでの東京圏の人口動態

 図表-2は、東京圏の転入超過数(住民基本台帳人口移動報告(総務省))の推移です。

図表-2 出典:住民基本台帳人口移動報告(総務省)

有効求人倍率格差は、東京圏(1都3県)平均の倍率÷全国平均の倍率として算出

 

東京圏では1994年と1995年を除いて基本的に転入超過が続いています。

しかし、23区(赤の棒グラフ)は1964年から転出超過に転じてから1996年までの間、人口流出が続いていました。そして、このあと1997年以降にようやく転入超過に転じ、現在まで人口増加が続いています。なんとなく東京は人が集まり人口が増え続けているイメージがありますが、実際には高度経済成長期とバブル期を通じて23区からは周辺都市に人が押し出される形で人口流出が続いていました。つまり、23区から人が流出して埼玉や千葉、神奈川に人が集まっていました。

とりわけ、住宅価格の高騰が著しかった1985年から1992年を抜き出すとこの8年間で埼玉県48万人、神奈川県40万人、千葉県35万人の転入超過となっていますが、23区は▲45万人と転出超過となっています。都心部での住宅価格や家賃の高騰により、人口は都心部から押し出されてきたわけです。

バブル崩壊後、住宅価格の調整が進むことで1997年以降は一変し、23区で転入超過が急激に進み始めました。2017年単年で23区6.1万人、千葉県1.6万人、埼玉県1.5万人、神奈川県1.3万人と大きく変化し、23区内に人々が集まるようになっています。

 

ちなみに、東京23区への転入者のうち女性の割合も年々増加しています。

 

図表-2には、東京圏と全国の有効求人倍率の格差の推移を重ねて表示していますが、東京圏の転入超過数の推移と似た動きをしていることが分かります。つまり、東京圏の方に仕事があるときは東京圏に人が集まっている傾向がみられます。

ただし、近年は有効求人倍率が全国的に上昇しているため、2009年以降有効求人倍率格差は0を下回り、最近は東京圏よりもむしろ全国平均の方が高くなっています。

しかし、平均的な所得面では東京圏の方が高いため人口流入が続いています。図表-3で関東所得格差として東京圏と全国平均の所得格差を「課税対象所得」(市町村税課税状況等の調(総務省))より算出したものと比較すると、所得面では2009年以降も1.3倍近い格差があり、所得面では東京圏が優位となっています。

図表-3 出典:住民基本台帳人口移動報告(総務省)

関東所得格差は、東京圏(1都3県)平均÷全国平均として算出

 

◇なぜ若者は東京を目指すのか?

有効求人倍率は東京圏が相対的に低く、所得は東京圏の方が高いということになりますが、何が起こっているのかというと、20代の若者がより条件の良い就職先を求めて東京圏に転入し、地方では人手不足感が高まり、東京圏では相対的に有効求人倍率が低くなっているのだと考えられます。

また、「課税対象所得」は東京圏の方が全国平均よりも3割ほど高いことが統計から分かりますが、実は20代の若者の所得だけを比較するとそこまで大きな差はありません。それなのになぜ、若者が東京に集まってくるのかというと、若者は今稼ぐことができるお金のためにやってくるというよりも、将来稼ぐことのできる所得のため或いは、仕事のスキルを身に着けるために東京圏に流入してきていると考えられます。

下記で、20~24歳までの賃金を賃金構造統計調査・きまって支給する現金給与額・企業規模10人以上(平成30年)で比較しました。

〔20~24歳〕

  • 東京都 253.8千円/月(109)
  • 神奈川県 251.1千円/月
  • 千葉県 240.1千円/月
  • 埼玉県 243.8千円/月
  • 静岡県 233.0千円/月(100)
  • 岐阜県 231.5千円/月
  • 大阪府 246.3千円/月(東京圏以外から東京圏及び23区への転入者が全国で最も多い)
  • 宮城県 218.7千円/月(東北地方で東京圏及び23区への転入者が最も多い)

 

上記の通り、東京都が最も高い月額となっていますが、他の府県との差はそれ程大きくはありません。むしろ、家賃や交通費などの生活費用を考えると東京の方が経済的自由は少ないのではとも考えられます。また、通勤時間の長さなども考えるとプライベートな時間も少なくなります。

 

しかし、東京で働けば、どの道府県よりも将来において経済的なリターンが得られることが期待できるため、東京圏に来ているのではないかと考えらます。

下記のとおり、賃金構造統計調査(厚労省)で30代から50代にかけての賃金を確認すると東京都(企業規模10人以上)の伸びが最も高いことが分かります。つまり、20代の若者は今の所得よりも、将来得られるであろう高い所得のために東京を目指しているというのが一つの理由であるといえると思います。

(静岡県を100とすると東京都は20~24歳で109ですが、50~54歳では東京は135と格差は広がります。)

〔50~54歳〕

  • 東京都 517.9千円/月(135)
  • 神奈川県 442.4千円/月
  • 千葉県 402.6千円/月
  • 埼玉県 389.1千円/月
  • 静岡県 382.4千円/月(100)
  • 岐阜県 307.9千円/月
  • 大阪府 433.0千円/月
  • 宮城県 372.5千円/月

 

 

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