◇人口動態と住宅市場の関連は?

住宅価格との関連を確認するために、住宅価格の指標を作成して比較してみます。

指標として、同グラフに新築マンション平均価格を平均課税所得で割ったマンション所得倍率をプロットしました(図表-4)。(新築マンション価格は不動産経済研究所による首都圏平均価格と、23区平均価格を使用し、所得は総務省による「市町村税課税状況等の調」を使用。)

図表-4 出典:住民基本台帳人口移動報告(総務省)

マンション所得倍率は、新築マンション価格÷課税所得として算出

マンション所得倍率は年々高くなっており、2002年以降この傾向が続いています。所得に課税所得を採用しているため実際のサラリーマンなどの年収倍率よりも高く算出されていますが、マンション価格が所得に対して実質的に上昇し続けていることは分かります。首都圏のマンション平均価格(不動産経済研究所)は2017年平均で5,908万円、23区平均で7,089万円となっており、マンション価格は2002年比でどちらも約1.5倍にもなっています。

 購入者にとっては、住宅ローン金利の低下で毎月のローン返済負担が低下するため、ある程度の上昇は許容することができますが、負担可能な水準を超えてくると購入者は23区内の新築を諦めて中古、賃貸、郊外などの物件を選択することを検討することになると思われます。

  

◇住宅価格は人口動態にどんな影響を与えているのか?

上記のとおり、東京圏の住宅価格は相当上昇していることが分かりますが、住宅価格上昇を踏まえて人口動態がどうなっているのかをみてみたいと思います。

一応確認しておきますが、一般的に住宅を購入するのは国土交通省の統計では30歳代が最もその割合が高く、その次に40歳代となっています。

 

○住宅の購入年齢

世帯主の年齢 平成29年度(国土交通省 住宅局「住宅市場動向報告書」)

(分譲戸建住宅)

30歳未満10.8%、30歳代49.5%、40歳代25.3%、50歳代8.2%、60歳代6.3%(平均39.6歳)

(分譲マンション)

30歳未満6.5%、30歳代38.6%、40歳代26.4%、50歳代13.0%、60歳代15.5%(平均44.1歳)

 

○年齢階層別の出生数の割合

母の年齢別出生数の割合 平成29年(厚生労働省「人口動態調査」)

20248.4%、252925.5%、303636.5%、353922.9%、40445.5

 

図表-5は、東京23区への転入超過数を年次別・年齢階層別にプロットしたものです。

2012年から2018年までの隔年の転入超過数で、20歳代の転入者数が多い一方で、住宅購入の中心となる30歳代で3539歳の転入者数が減少していることが分かります。

また、特徴的なのは23区では35歳以上の全ての年齢層でマイナスとなっている点です。 

東京圏全体でみると、また23区全年齢の転入超過数をみると、あたかも一様に人口増加が起こっているようにみえるのですが、実際はそうではなく、住宅価格が予算制約を超えてしまったことで23区においては中心的な住宅購入者層となる30歳代及び40歳代で転出超過に転じていることが分かります。

図表-5 出典:住民基本台帳人口移動報告(総務省)

(住民基本台帳人口移動報告(総務省)による5歳階級別転入超過数を集計して作成)

 

東京圏)

  • 20~24歳の転入者:東京圏 2016年→2018年 68,883人→75,103人
  • 30~34歳の転入者:東京圏 2016年→2018年 3,699人→7,476人
  • 35~39歳の転入者:東京圏 2016年→2018年 365人→2,001人

23区)

  • 20~24歳の転入者:23区 2016年→2018年 48,597人(70.6%)→51,019人(67.9%)
  • 30~34歳の転入者:23区 2016年→2018年 385人(10.4%)→1,707人(22.8%)
  • 35~39歳の転入者:23区 2016年→2018年 ▲1,935人(-)→▲2,363人(-)

 

それでは、東京都と神奈川県、埼玉県、千葉県の人口動態はどうなっているのかみてみます。

 

図表-6 出典:住民基本台帳人口移動報告(総務省)

(住民基本台帳人口移動報告(総務省)による5歳階級別転入超過数を集計して作成)

 

図表-7 出典:住民基本台帳人口移動報告(総務省)

(住民基本台帳人口移動報告(総務省)による5歳階級別転入超過数を集計して作成)

 

図表-8 出典:住民基本台帳人口移動報告(総務省)

(住民基本台帳人口移動報告(総務省)による5歳階級別転入超過数を集計して作成)

 

図表-9 出典:住民基本台帳人口移動報告(総務省)

(住民基本台帳人口移動報告(総務省)による5歳階級別転入超過数を集計して作成)

 

2018年の数字をみると、東京都は23区の影響で35歳~39歳でマイナスとなっていますが、市部のみではプラス1,401人になります。また、他の県も全て35歳~39歳でプラスとなっており、住宅価格の高騰で23区から押し出された人口が周辺都市に流れていることが分かります。特に埼玉県については25歳から39歳の転入超過数が大幅に増加していることが分かります。

神奈川県は、埼玉県、千葉県と比較するとそこまで大きな変化は起きていないようです。

  

◇横浜市、川崎市、さいたま市、千葉市ではどうなっているか?

 横浜市では、住宅購入の中心となる30歳代では2018年で増加しています。しかし、40歳代では若干のマイナスとなっています。

 

図表-10 出典:住民基本台帳人口移動報告(総務省)

(住民基本台帳人口移動報告(総務省)による5歳階級別転入超過数を集計して作成)

 

川崎市では、3034歳が2012年から既にマイナスで転出超過となっています。

特徴的なのは、グラフの波が23区とよく似ていることです。23区と住宅市場の動向も似ているものと考えられます。

 

図表-11 出典:住民基本台帳人口移動報告(総務省)

(住民基本台帳人口移動報告(総務省)による5歳階級別転入超過数を集計して作成)

 

さいたま市については、30歳から54歳までが転入超過となっており、2012年から2018年にかけて転入超過数が明らかに増加しています。23区からの転出者や23区内を選択しない人々がさいたま市に流入して住宅を購入しているものと考えられます。

図表-12 出典:住民基本台帳人口移動報告(総務省)

(住民基本台帳人口移動報告(総務省)による5歳階級別転入超過数を集計して作成)

 

千葉市が特徴的なのは、2529歳の世代が転出超過となっており、その傾向が続いていることです。地方都市などでみられる傾向です。

逆に、30歳以上の年齢階層では2018年において、いずれも転入超過となっています。2016年までは30歳以上の年齢階層でも転出超過の年もありましたが、2018年には住宅購入世代となる30歳代、40歳代で転入超過となっています。

図表-13 出典:住民基本台帳人口移動報告(総務省)

(住民基本台帳人口移動報告(総務省)による5歳階級別転入超過数を集計して作成)

 

まとめ)

23区や首都圏における住宅価格の高騰が人口移動にどのような関係があるのかを一つの側面からみてみました。

データから分かったことは。 

  • 23区内への人口流入は主に20歳代の若者が中心となっていますが、住宅購入世代となる30歳代、40歳代で転出超過の傾向がみられます。
  • ②さいたま市では30歳代以上の流入が顕著となっています。
  • ③横浜市では30歳代の転入超過がみられますが、それほど多くはなく、23区の転出超過の受け皿になっているとまではいえません。
  • ④川崎市の人口移動の流れは23区とよく似ており、住宅購入世代の30歳代、40歳代で転出超過の傾向が強まっている。

ということです。機会があればまた、別の側面から東京圏の住宅市場の分析をしてみたいと思います。

 

以上