(配偶者居住権 1 からのつづき)

[評価の具体例]

単純化した前提条件ものと、相続税法による評価と不動産鑑定評価で同一不動産の試算をしてみます。

 

 

[まとめ]

試算してみて)

相続税法による評価額と不動産鑑定評価による評価額は21.7百万円と23.1百万円と概ね近い水準ですが、配偶者居住権が付着した建物及びその敷地については27.2百万円と33.3百万円と約6百万円の差が生じています。設定前の土地建物が4,900万円と5,640万円と差があり、内訳割合も異なるため、結論に差異が生じるのは当然です。

納税上は法律で定められている以上、相続税法による評価をしなければならないのですが、遺産分割や配偶者居住権の買戻しといった実際の経済的利益が問題となる場面では、やはり現実の市場を前提とした時価の概念に基づく不動産鑑定評価を行うことが相続人間では公平だと思います。

特に、地価が上昇している局面や都心部のエリアでは路線価と時価との乖離が大きくなる傾向があり注意が必要です(好況期の東京23区内では住宅地でも路線価×2=時価、という地域も多くみられます。)。賃料と地価の変動を比較すると、地価上昇期に賃料(特に家賃)は上昇のスピードが遅く、地価下落期に賃料は下落しにくいといった特性があるため、地価上昇期に鑑定評価で配偶者居住権を評価すると経済的利益還元法で求めた価格の割合は小さくなります。一方、権利消滅時現価法は原価法で試算した積算価格をベースにしているので地価上昇を反映して価格割合が大きくなり、相続税評価額と鑑定評価額の差がより鮮明になります。

逆に、地価の下落局面では両者の差は小さくなる傾向があるということができます。また、さらにいうと大きな経済不況期などは時価が路線価を下回ることも希にあるので、相続税評価額と時価(市場価値)とを混同しないように取り扱う必要があります(リーマンショック後しばらくは東京の銀座や渋谷でも地価は路線価フラットかそれよりもやや低い水準まで下がっている現象が見られました。)。

まとめ)

配偶者居住権を設定すべきかどうかは相続人間の関係性や配偶者の年齢、相続財産の総額、節税になるケースかどうかなど様々な事情があるので個別的に判断されるべきものだと思います。従来からある使用借権や賃借権なども明確に契約内容を書面化してその合意内容を取り決めれば、親族間でうまく建物の使用と所有を分離して遺産を分配することも可能だと思いますので、専門家と相談しながら総合的に判断すべきです。

いずれにしても、配偶者居住権についても法的に認められた新しい権利として相続対策の選択肢として知っておくことは重要だと思います。