2018年の神奈川県地価調査(7/1時点)で商業地の地価は引き続き上昇が鮮明になっていますが、過去の上昇局面と今回の上昇している現象にはどのような違いがあるのか、簡単に確認してみたいと思います。

 これまで①1980年代後半から90年代前半のバブル期、②2006年から2008年頃までのファンドバブル期、③2013年以降のアベノミクス景気と地価は上昇していますが、神奈川県が発表している地価調査のデータを使って質的な変化があるのかどうか確認してみます。

 下のグラフは、神奈川県内の市区町村ごとの商業地(地価調査価格)の平均価格(円/㎡)を年代別・自治体別に並べてみたものです。①として昭和63年時点、②として平成20年時点、③として平成30年の地価調査データを使用しています。

 

 

昭和63年では横浜市西区の平均価格が約600万円/㎡と突出して高いですが、横浜市神奈川区や中区、川崎区、鎌倉市、厚木市なども約300万円/㎡ほどと現在と比較すると高額になっています。これに対して平成30年時点では、横浜市西区の商業地は約300万円/㎡ほどまで回復しておりますが、他の市区町村との差が大きくなっていることがグラフから見て取れます。

 この3年分の市区ごとの平均価格について、基本統計量は下記の通りです。

 

 

地価調査価格のばらつきを、標準偏差を平均値で割った変動係数で確認すると、昭和63年に0.89であった値は平成20年に0.69と一旦小さくなりましたが、平成30年に1.09と大きくなっています。変動係数の値が大きいほど、ばらつきの度合いが大きいので、昭和63年よりも平成30年の方が地域間での価格格差が生じているものと言えます。バブル期においては、県内全体が一斉に地価上昇する状態であったのが、アベノミクス景気では地域ごとに傾向が異なり、価格差が生じている状態になっています。

以下では、同じデータを使って、市区町村ごとの年間変動率で確認してみます。

 

 

上記グラフから確認できるように、昭和63年時点では、秦野市や厚木市にとどまらず、大磯町や二宮町、湯河原町、津久井町まで30%を超える高い上昇率となっています。バブル期においては、県内全域でかなり強烈な地価上昇が起こっていたことが分かります。これに対して、平成20年と平成30年は、地価の上昇してる地域が多いですが、概ね8%以下の控えめな上昇で、郊外では下落している地域もあり、地価推移の方向は一様ではないことが分かります。

上記データの基本統計量(市区町村ごとの年間変動率(%))は下記のとおりです。

 

 

先ほどと同様に、市区町村ごとの変動率のばらつきを変動係数で表すと、昭和63年で0.59、平成20年で0.72、平成30年には2.04とだんだん大きくなっています。

グラフでも確認できる通り、アベノミクス景気による地価変動は、県内の商業地に一様に作用しているものではなく、地域間での地価変動の違いが大きく、都心部では上昇が鮮明である一方、郊外部では下落が続いているなど様相が異なります。ただし、郊外でも例えば観光客をひきつけている箱根は、真鶴町や湯河原町が下落している中、平成30年に+2.9%上昇しています。

アベノミクス景気では金融政策により日銀が大きくマネタリーベースを増やして、市中に出回るお金を増やしていますが、資金が流入する地域はバブル期の様にどこでもということではない訳です。

こうした、市区町村間の地価動向の格差が変動係数の2.04に表れています。

このような地価動向の質的な変化の理由は様々考えられますが、特に郊外では顧客の減少によって空き店舗の増加が地価の下げ止まらない要因となっています。これは、高齢化や都心部への人口流出、ネットショッピングの普及や路線商業地域の拡大による中心的商業地の相対的希少性低下などが複合的に影響しているものと考えられます。

(平成9年(1997年)ごろから日本の生産年齢人口は減少に転じており、平成20年(2008年)ごろからは人口全体が減少局面に入りました。過去2回の地価上昇局面では人口自体が減少するという局面には在りませんでした。)

以上